味噌や作りての方々のストーリーをつないでいく
【MISO PEOPLE'S VOICE】
味噌人:YUMISO代表 中村友美
聞き手:ドットミソ代表テキサス・アユミ
ーー 本日は、手前味噌の魅力を広める活動をされているYUMISOの中村友美さんにお話しを伺います。
中村友美さん(以下中村さん):YUMISO代表の中村と申します。現在は子育てをしながら、パラレルワークのひとつとして、味噌の魅力を発信する活動をしています。
私自身、大学卒業後は会社員として味噌とは無縁の会社で14年間ほど勤めていたんですが、その間に2度の出産や復職を経験しています。その後、子どもの入院をきっかけにキャリアや家族との時間、食の大切さを考えるようになり、2019年に退職して1年間調理師専門学校に通いました。
2020年3月が専門学校を卒業するタイミングだったのですが、ちょうどコロナが始まった頃で。どこにも行けない、子どもたちも学校も保育園もなくて家にいる状態が続いていて、味噌キットなら家でも仕込めるなっていうことで始めたのが原点としてあります。
ーー 起業するまでに味噌作りをしたことはあったんですか?
中村さん:自宅の近くの麹屋さんで味噌作りをしたことはあって、味噌自体には会社員時代にも興味はあったんですけれども、味噌キットで家で仕込むのはコロナ禍が初めてでした。
三つの「YU」から生まれたYUMISO
ーー YUMISOではどんな活動をされているのでしょうか?
中村さん:YUMISO自体は2020年の4月から活動が始まり、手前味噌が秘める面白さと可能性を探求・発信するプロジェクトとして今は活動しています。主に味噌作りのワークショップや、全国にある手前味噌キットをYUMISOのウェブサイトで紹介しています。
ーー 「YUMISO」の名前には「MISO」が含まれていますが、由来を教えていただけますか?
中村さん:YUMISOの”YU”は3つの漢字からとっているんです。「優」しい・「遊」ぶ・「結」ぶ、それぞれの漢字から取っています。
味噌が「優」しい食べ物だということ、味噌作り自体が「遊」びの時間として五感を解放するのものであること、味噌づくりは人と人を「結」ぶひとつのコミュニケーション。その三つの漢字を名前の由来にしています。
ーー すてきな思いが詰まっているんですね。
中村さん:YUMISOのコンセプトは「手前みそとともに、発酵する毎日を。」です。
さまざまな年齢の方に参加していただけるように、いろんな場所で味噌づくりワークショップを開催しています。手前味噌を仕込むだけではなく、“味噌を仕込む時間”や“機会”をコミュニケーションとしても提案するということを大事にしています。
ワークショップにきていただいた方には、味噌を見直す時間としてテーマを掲げています。味噌だったり、手前味噌が持つ可能性や魅力について考える時間にしてほしいなと思っています。
今まで使った味噌づくりキットは50種類以上
ーー 友美さんはご自身でもいろんな味噌蔵さんのキットを実際に使われていますよね。
中村さん:ネットで検索する限りでは、味噌キット自体で100種類以上あることはわかっていて、そのうちの約50種類ぐらいは試しました。
色々試す中で感じたことですが、味噌の種類はもちろん味噌蔵さんごとの独自の特徴があって、キットが自宅に届いた時点からそれぞれのカラーが出ているのが面白さでもあるなと思っています。
ーー 味噌づくりキットを選ぶポイントなどを教えていただけますか?
中村さん:YUMISOで紹介してるキットは、初めて味噌づくりをする方を想定しています。味噌キットをたくさん仕込む中でわかったのは、いろんなキットがあるんですよね。例えば、大豆が乾燥でくるのか、蒸してあるのか、煮てあるのか、潰れているのか、潰れてないのか。それぞれの味噌蔵さんによって全然違うんですよね。
大豆がすでに潰れているものなど、初めて味噌づくりをする方でも、比較的簡単に作ることができるものもたくさんあります。
大豆の違いで選んだり、米味噌なのか、麦味噌なのか、キットを発売されている地域で選んでいただいても面白いかなと思います。
ーー YUMISOのサイトでわかりやすく分類されているので、自分の好みで選べるのがいいですよね。
中村さん:わかりやすくした方が、より味噌づくりを始めるきっかけとしてもいいんじゃないかなと思ってるので、YUMISOのウェブサイトでは、それぞれの違いが一覧で見てわかるようにリニューアルのタイミングで、細かく書くようにしました。
一人ひとりの人生を発酵させるというミッションに込められた想い
ーー YUMISOのサイトでは、友美さんの思いがサイトの端々からも感じられます。
中村さん:コンセプトもそうですが、YUMISOを昨年リブランディングしたタイミングで、「手前みそを仕込む人を増やし、1人ひとりの人生を発酵させる。」ということをミッションとして掲げました。
まずは手前味噌に関心を持つ人を増やして、つくったことのある人を増やす。さらにそれを習慣として続けられる人を増やす。そして「個性を活かして健やかに生きて豊かな人生を送る人が増えてほしい」という願いも込めています。
ーー ただの味噌づくりだけではない、人生の豊かさまでの思いが込められているのですね。
中村さん:味噌自体すごく茶色で地味なイメージがありますが、手前味噌キットを見てみるだけでもそれぞれ個性があるんですよね。同じキットで作っても、保管する場所や季節、地域、気候が関わってくるので、全く同じようにはできあがらない。
そういうところを含めて面白さがあるので、自分たちの個性や人生も、手前味噌を通して発酵させてほしいなっていう意味も含めています。
ーー 人生を発酵させていく、すごく素敵なテーマですね。
中村さん:味噌づくりには丁寧な暮らしとかいろんな視点もあるとは思うのですが、小さなお子さんからおじいちゃん、おばあちゃんまでできる軽いエクササイズにもなるというのもひとつの魅力だと思っています。
味噌づくり=楽しく、おいしいものが出来上がるという部分から入ってもらって、味噌づくり自体をコミュニケーションのひとつとして、提案したい想いがあります。
コミュニティ創生につながる味噌づくり体験
ーー これまでのワークショップではどのような反響がありましたか?
中村さん:学校のPTAで味噌づくりを体験してもらう機会をいただいた際に、40名ぐらいの保護者の方が参加してくださったのですが、すごく喜んでいただけました。
味噌づくりの面白さや、できあがりを待つ時間の楽しさ、さらに美味しくて健康なものができるとなると、半分以上の方が「自分の子どもにも作ってもらいたい」「いずれ社会人になって独り立ちするタイミングで味噌づくりをして自立していって欲しい」といった感想をいただいたんです。
コロナ禍ではオンラインで味噌作りすることもありましたが、その場に集まった方々や一緒に作る方々の中でのコミュニケーションにもなるっていうのが魅力だなと思っています。
ーー 味噌がコミュニティ創生につながる食べ物だということですね。
中村さん:本当にそうだと思います。一つの味噌づくりをきっかけに、自分の健康を考えたり、1年に1回集まるようなリユニオン的な場として設けたり、何かしら味噌づくりを通して自分の日常の生活との接点や面白さ、楽しさと繋げていただけたら嬉しいですね。
10月におすすめ:小泉麹屋さんの味噌キット
ーー この時期(10月)におすすめの味噌キットをご紹介いただけますか?
中村さん:通年販売するところとある時期だけで販売しているところもあります。通年だと、神奈川県横浜市にある「小泉麹屋」さんの味噌づくりキットは大豆を潰した状態で販売してくださっているので、初めて味噌づくりをする方にはオススメです。小泉麹屋さんでは11、12月あたりに実店舗でもち麦麹の味噌づくりの予定をアップされていたので、お近くの方にはぜひ行ってみていただきたいですね。
ーー YUMISOさんの仕事の中でこだわりっていることは何ですか?
中村さん:糀屋さんでもある「sawvi」のニットとエプロンをユニフォームとして使っています。糀屋さんが作られてるっていう点がすごく魅力ではあるのですが、 ニットは土に返すこともでき「100年使える服」というサステナブルなコンセプトに共感しています。玄米糀やキットも販売されているので、ぜひチェックしていただきたいですね。
「届いた状態」から「使う」までを見届ける楽しさ
中村さん:あと、少しマニアックなんですが、キットが届いたらまずは届いた状態でテーブルの上において全体を眺めています。
そうすると、箱の色だったり、梱包の仕方からも蔵元さんのカラーや会社さん、麹屋さんの特徴が出ていて、開けた時のファーストインプレッションも全然違うんですよね。
ーー そのこだわり、わかります(笑)!
中村さん:例えば、群馬にある糀屋さんでは輪ゴムを赤にしているんですよ。「茶色だと味噌に混ざってしまうとわかりづらくなってしまう」とおっしゃっていて。農家さんが作られている味噌は新聞紙にくるんであって、農家さんから届けていただいてる感を感じられる楽しさがある、とか。
キレイに梱包してるとか、丁寧に梱包してあるとかそういうことを見ているのではなく、それぞれの会社さんや蔵元さんの特徴を、箱の状態から開けて使うまで全部見届けるのが楽しいですね。
「百聞は一見にしかず」の言葉を体現し発信していく
ーー 座右の銘を教えていただけますでしょうか?
中村さん: 「百聞は一見にしかず」という言葉をすごく大事にしています。学生時代、国内外のスタディーツアーに行ったりしていたんですけど、机上での学びとセットで必ず現地に行く大事さ、そこで暮らして生活してる人と実際に会って話すという大切さを感じています。
コロナ禍を経て外に出られるようになってきたので、去年くらいからキットで注文していた味噌蔵さんの味噌づくりワークショップに参加することも始めています。家で作るのとは違う楽しさや面白さが出てくるので、引き続き蔵元さんでの講習会は参加していきたいですね。
ーー 友美さんは研究家であり探究家であるなと。刺激をいただいています。
中村さん:まずは関心をもってもらいたいですね。まずはキットじゃなくても、自宅の近くでやっている麹屋さんなどのワークショップでもいいんと思うんです。
ーー ブランディングからミッションまで、味噌への熱いお話、ありがとうございました!