【MISO PEOPLE'S VOICE】vol.002 三浦醸造所 三浦誠司さん 千代さん

【MISO PEOPLE'S VOICE】vol.002 三浦醸造所 三浦誠司さん 千代さん

味噌や作りての方々のストーリーをつないでいく
【MISO PEOPLE'S VOICE】

味噌人:徳島県 三浦醸造所 三浦誠司 さん 三浦千代 さん
聞き手:ドットミソ代表テキサス・アユミ

ーー 本日のゲストは徳島県の三浦醸造所 五代目杜氏で社長の三浦誠司さんと奥様の三浦千代さんにお話をお伺いします!どうぞよろしくお願いいたします。

三浦誠司さん(以下誠司さん) こんにちは、三浦醸造所の三浦です。よろしくお願いします。

三浦千代さん(以下千代さん) 初めまして、三浦醸造所の5代目杜氏社長の妻をしております、千代と申します。
社長はこういうのがすごく苦手なので、さっきから水飲みたいってドキドキしてるんですけど(笑)、笑いながらご覧いただければと思います。よろしくお願いします。

ーー このインタビューを通してお二人のすてきなお人柄が皆さんに伝わってほしいなと個人的には思っております!

創業175年目、挑戦の歴史

ーー 早速ですが、三浦醸造所の成り立ちをお伺いできますでしょうか?

千代さん 創業が1849年になります。江戸時代の終わりの頃ですね。今年でちょうど175年目を迎える蔵です。本当に小さな蔵で、家族で営んでいます。

創業から4代目まではねさし味噌と濃口醤油の醸造をやってたんですけども、戦争のときに原材料が入ってこなくなってしまって。泣く泣く醤油醸造をストップしてしまいました。

東京で働いていた5代目が戻ってきて家を継いでから、ねさし味噌一本ではちょっと厳しいところもあって、他の商品もいろいろと開発をしていくようになりました。米糀味噌や黒大豆糀味噌ですね。

その後、醤油醸造をどうしても復活させたいという強い思いがありましたので、30年ぐらいかけて構想を経て、蔵もセルフビルドで15年かけて建てて認可を取って、醤油の醸造を再開しました。

ーー 今発売されている一番しぼり限定醤油「夢來」ですね。

千代さん これで(開発が)落ち着いたかなと思ったら、今度は甘酒だよねって。5代目は甘いものが好きなので甘酒も作りました。並行して農地もそこそこありますので、原材料となるお米は全量、それから大豆も一部そして野菜も、自然農法で作っております。

徳島県独特の豆味噌”ねさし味噌”

ーー 三浦醸造さんの味噌の特徴を教えてください。

誠司さん 日本ではお味噌の種類は大きく分けて三つあるんですよね。この豆味噌(ねさし味噌)、米味噌。あとうちでは作ってないんですけど、麦味噌。

国内で消費されてるのは米味噌が多いかな。愛媛とか九州あたりでは麦味噌が多く食べられてます。東海地方と徳島県のこのエリアでだけ食べられるのは、豆味噌という大豆と塩だけで作った味噌です。

ーー 米味噌とは違う、豆味噌”ねさし味噌”とはどのようなものでしょうか?

誠司さん 作ってる時期は冬だけなんです。まずは、よく水にひたした大豆をお釜で薪で炊いて蒸すんです。蒸したものを熱々のうちにミンチにかけて、円柱状にまとめていきます。熱いうちにまとめないとまとまらないんです。

大体1日ぐらい置くと硬くなるので、硬くなってから、”寝さしどこ”というムシロの上で約2センチぐらいの厚さに切っていきます。ここで数十日置いとくと、ムシロに菌がついてるのでカビが生えてくるんですよね。

これを途中で1回ひっくり返して全体にカビを生やして、塩水と煮汁と混ぜて桶に仕込んでいくっていう、簡単に説明すると、こういう作業内容なんです。

千代さん それを桶の中に仕込んで最低3年から5年。今回皆さんのところにお届けした味噌は、4年ぐらい経ってるものです。

ーー 商品の名前にもある”ねさし”とはどういう意味ですか?

千代さん 阿波弁の「ねさす」っていうのは「寝かせる」。例えば子供を寝さすとか、そういう言い方なんですね。ムシロの上に広く薄く並べて寝かせるから”ねさし”というのか、長期熟成で寝かせるから”ねさし”というのかの二つ説がありまして。どっちも要するに、「寝てる」っていう意味です。

蔵付きの菌を生やした天然熟成の味噌

ーー ’ねさし味噌’は三浦醸造さんの味噌独自の名前なんですか?

千代さん いえ、ねさし味噌は徳島県の豆味噌の総称なんです。その中でもうちのねさし味噌は、「自然生え製法」なんですね。

基本的にお味噌って種麹っていうのを使います。例えば米味噌だったらお米を米麹にする段階で種麹っていうのを入れるんです。

けどうちの場合は、蔵に住んでる菌を生やすだけなので、種麹を一切使わないという製法なんですね。昔はどこでも行われてた作り方なんですけどね。今となっては、(自然生え製法で)ずっと作り続けているのはうちぐらいなんじゃないかな。


ーー 天然の蔵付きの菌というやつですね。蔵付きの菌で味噌づくりを行うことの難しさはありますか?

誠司さん 低い温度でも繁殖できるのが蔵付きの菌なんです。もちろん(普通の麹菌と同じように)25度ぐらいが一番生育は良いんですけど。温度が低いときに麹を作ると雑菌が少ない。その環境の中で麹を作ることが可能なんですよね。

千代さん 他の麹菌が頑張れないときに頑張れるという。ねさしの菌はケカビっていうんですけど、ケカビだけがかろうじて頑張れる温度帯で頑張ってもらう。

本当は、23度とか24度とか、それぐらいの温度帯が活発に菌が繁殖できるんです。でもその温度ってもういろんな菌がわんさかわんさかわんさか出てくるんです。そうすると、とてもじゃないですけど天然醸造ってのはできないんですよね。

今年の夏もすごく暑くて大変でしたけども、冬も暖冬で湿度も高くて気温も高いっていう日がいきなりやってくると、せっかく仕込んだねさし味噌がいい状態まで持っていけないっていうこともあるんですね。

過去に1回分の仕込み量のほぼ半分以上廃棄せざるをえなかった年もあります。今となっては本当にリスキーな作り方ですね。

逆に言えば、昔は誰でも作れた製法なんですよね。特別な道具がいるわけでもなく、本当に自然界の中にいるものの力を借りて、時間だけかければ作っていけるっていうものだったんですけど。

今はその時間をどう見極めるかとか、私達が暮らしてる中で、微妙な気温とか湿度の変化っていうのをどう捉えていくかっていうのがすごく難しくはなってますね。

 ちょい足しで味の幅が広がるねさし味噌

ーー 黒大豆糀味噌の特徴を教えてださい。

千代さん 原材料が黄色い大豆ではなく、全量国産の黒大豆を使っているので、とにかくまめまめしさが半端ないんですよ。

豆の旨みとか甘みとかすべてが楽しめるので、旬の野菜スティックにしてそのまま、まずはディップでズボッと食べていただくと美味しいかなと思います。

誠司さん タケノコの季節に、黒大豆糀味噌に酢や砂糖やすだちなんかで酢味噌をこしらえて、タケノコにあえて食べるのが私は好きですね。

千代さん 蜂蜜とかオリーブオイルとか、ヨーグルトとかそういうものとも相性がいいですよ。蜂蜜とちょっと混ぜて甘みを付け加えて、軽くトーストしたパンとかクラッカーとかにのせておつまみとかおやつにしても美味しいと思います。

ーー 味噌とはちみつ!聞くだけで美味しそうですね、必ずやります!

冬のおでん出汁にちょい足しも

ーー ねさし味噌の特徴を教えてください。

誠司さん ねさし味噌はね、癖があるので癖のあるものに合わせると美味しいんですよね。豚汁であったり、アラ汁であったり。魚の味噌漬けであったり、こっちだったらかつおのたたきでね、酢味噌で食べるとか。

千代さん あとはもうとにかく、隠し調味料としてもすごい万能なお利口さんなんです。おうちで普段使ってるお味噌の料理を作るときに、ちょっと加えてもらうんですよ。合わせ味噌にしてしまう。

お手持ちのお味噌でちょっとブレンドしたら、どんなふうに味が変わるかなっていうのをまず楽しんでいただければいいですね。

お肉とか油物とかの相性も非常に良いので、そういうふうなものを使ったお料理に入れる。普段のカレーにスプーン一杯入れて煮込んでください。すごく美味しくなると思います!

今からの季節だとおでんのつゆ。出来合いのおでんのスープでもいいので、ほんのちょっと寝さし味噌加えて煮込んでいただいても美味しいかなと思います。

牛乳との相性もすごくいいので、シチューとかミルクリゾットとかグラタンとかそういうのを作るときにちょっと入れても美味しいです。

とにかく何にでもちょっと入れていくっていう。袋入りのインスタントラーメンラーメンを作るときに、粉末とか液体のスープを半分ぐらい減らして、ちょっとねさし味噌をいれてみるのも美味しいですよ。

甘酒づくりへの情熱

ーー 美味しそうなレシピをたくさんありがとうございます!使うイメージがもりもり湧いてきました。そして何と言っても、私も大好きなねさし甘酒!

千代さん ありがとうございます。甘酒を商品化するまでに、五代目は丸々2年間、毎日甘酒を作ってたんですよ。お味噌屋さんなのに毎日甘酒。来る日も来る日も甘酒が出てくるんです(笑)。 いろんなお米で精米を変えてみたりとか、いろんな品種で作ってみたりとか。それで落ち着いたのが今回の甘酒ですね。

実はですね、あまり公表していないデータなのですが、うまみの素と言われているLグルタミン酸の含有量を大学で測っていただいて、他社の米麹の甘酒より断然旨味が強い。甘いんだけどうまい。甘さがしつこくない。

ーー ありがとうございます。本当に、スッキリ身体に染みわたるおいしさですよね。ちょっと凍らしてシャリシャリと食べると最高においしいので、ぜひみなさんにも試していただきたいです!

ものづくりのときは、穏やかでいること

ーー 三浦醸造所さんの魅力のひとつに、ものづくりへの突き詰め方や姿勢を感じています。ものづくりをする中で、ご自身で決められているこだわりはありますか?

誠司さん 穏やかな気持ちで作れるようにする。作業を急いですることもあるんですけど、できれば心穏やかな気持ちで作業が滞りなくできるように、そういう心構えではやってるんですけども。

気持ちを落ち着かせるってなかなか難しいもんでね。いつも不満があるんではやっぱり気持ちも落ちつかないんで、満たされているっていう気持ちをどっかにずっと持つことですよね。そうしないと穏やかな気持ちでできないんでね。

あと誘惑はやっぱりあるんですよね。早くできる方法にするとかね。こうすればコストが安くできるとか、こうすれば原材料が少なくて済むとか。

でもそれを突き詰めていくとやっぱり味もね、それなりじゃないですか。だから、いつも買ってくださるお客様に、同じような商品ができるように、というそういう気持ちに持っていかないとね。そのためにも作るときには穏やかな気持ちでいないとね。

ーー 口で言うのは簡単ですけど、常にそうあるっていうことは本当に難しいことだなと、今のお話を聞いて感じました。千代さんのご尽力もあるのでは?

千代さん 私はどうでもいい話をして笑ってるだけなのでね(笑) よく話をします。作業をしていても大体笑えるような話を、ギャグを言いながらやってるっていう。秘伝とか匠とかないんだよね。

苦節何年とかないんですよ。もう普通に、家族でやってる蔵のいいところかなと思います。家族でやっているので家族の日々の語らいの中で、本当に息をするように仕事はできないんですけど、でも日々の、何て言うのかな、暮らしの中に仕事はある。仕事が暮らしを押しつぶしてもいけないし、そのバランスなのでね。

忙しいときも、美味しいものを作って食べて、美味しかったねって一息ついて仕事に戻るっていう感じですかね。

じっくり楽しく、焦らずゆっくり

ーー お二人の人生の座右の銘をお伺いしてもよろしいでしょうか?

千代さん 食べ物って命を繋ぐっていうのがまず一つだけども、人と人とを結ぶし、そして食べ物を通して思いも伝わると思ってるんですね。

だから、なんということのないものなんですけど、変わらないやり方でちっちゃな蔵だからできるもの作りをしていければいいかなって。等身大でできることを心を込めてやりたいなと考えています。

誠司さん 全部言われちゃった(笑)。なんていうのかな、一生懸命仕事をするっていうことなんですけどね。じっくり楽しく、焦らずゆっくりとって感じですかね。

ーー ありがとうございます。

千代さん 実は三浦醸造の商品のデザイン、全て北海道の会社さんがデザインしてくださっていて。ファームステッドさんという帯広に本社がある会社さんです。私達のもの作りに思いを寄せていいデザインを作ってくださっています。

今回初めて北海道にうちの商品が行くってなったときに、お里帰りをするようなというか、北海道の方に見ていただけることがすごい嬉しいなっていう気持ちがしました。

ーー それは嬉しいご縁ですね!思わぬご縁つなぎができて私も嬉しいです。

北海道では初めてのイベント出品中

ーー 最後に本イベントに来ていただく方にメッセージをお願いします。

誠司さん 北海道の方に食べていただけることが本当に嬉しいです。ありがとうございます。

千代さん 私は実は北海道にまだ一度も行ったことがなくて、本当に未知の世界なんですけど、今回うちの子たちが先に行ってくれて。お母さんが行ったことがないところに修学旅行に行くみたいな、ね。

本当に子供たちにね、行って楽しんでお仲間に加えてもらってねっていうふうな気持ちで送り出しましたので、うちの子たちをどうぞ皆様よろしくお願いいたします。 

ーー 三浦誠司さん、千代さん、貴重なお話ありがとうございました!

蔵の中の写真も見せていただいているインタビューライブの全容はぜひアーカイブでごらんください!

【インタビューライブのアーカイブはこちら】

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