味噌や作り手の方々のストーリーをつないでいく
【MISO PEOPLE'S VOICE】
味噌人:広島県 和高醸造 4代目 大坪 慎吾さん
聞き手:ドットミソ代表 テキサス・アユミ
ーー 本日のゲストは大阪府 広島県 和高醸造 大坪慎吾さんにお話を伺います。大坪さん、どうぞよろしくお願いいたします!
大坪慎吾さん(以下大坪さん) 広島県の安芸高田市向原町に蔵があります、和高醸造代表の大坪と申します。そんなに大きな蔵ではないんですが、創業が105年目で自分で4代目になります。
味噌や醤油を作っているんですけど、主力商品は味噌になります。味噌は麹作りから全て自分も入って、パートの方と何人かで作ってますね。年中仕込んでます。
ーー 広島の味噌の特徴はなんでしょうか。
大坪さん 広島県は米味噌とか麦味噌、米と麦の合わせ味噌が多いです。比較的、甘口の味噌が多いですね。うちは米味噌だけなんですけれど、甘くて色も白味噌に近い味噌を作ってます。
音楽とリンクする「アップビートソース」
ーー 今回のニッポン味噌道中では、和高醸造さんの通常の味噌商品ではなく『アップビートソースシリーズ』をピックアップして紹介しています。
大坪さん アップビートソースシリーズは、自分が9年前に代表を継いで社長になったときからスタートした商品ラインナップになってまして。一番伝えたいことは、『音楽とリンクした調味料』っていうコンセプトです。今6種類あって年に1、2個ぐらい新しい商品を出しながら進めている最中です。
ーー 『音楽とリンクをする』すごく新しい切り口ですよね。そういったアイディアが出てきたルーツはなんでしょうか?
大坪さん 自分が代表を継いだときに、味噌や醤油の消費量がだんだん落ち込んでる現状がありまして。継いだはいいけど、このままだと会社としてどうなるのだろうっていう危機感を抱いていました。常連の方はずっと買ってくださるんですけど、自分と同じ40代とかもっと若い世代に知ってもらわないと駄目だなと思って商品開発を始めました。
普通の商品を作るのも考えたんですけど、趣味でDJとかレコードが昔から好きなので、好きなものだったら熱意を持って伝えられるんじゃないかって。自分の好きな音楽と調味料を組み合わせて、熱意を持って若い人たちに伝えていきたいと思ったのがきっかけですね。
クラブで味噌を配るユニークな宣伝
ーー 大坪さんは、クラブで味噌を配るという、とってもユニークな宣伝をされているというお話をお伺いしました!
大坪さん アップビートソースを作る前なんですけど、ちょっとでも味噌を知ってもらいたいなと思って。リュックサックにちっちゃい味噌とか醤油とかを詰めてクラブに遊びに行ってたんで、そこで出会った人に、よかったらって言って(笑)
味噌を配ったら結構びっくりされるんですけど、インパクトが残って、実際食べてみて美味しかったですと結構良い反応いただきましたね。
ーー アップビートソース、まず目にいくのはジャケットですよね!
大坪さん レコードジャケットをモチーフにしてデザインをお願いしてまして。全部同じデザイナーの方に依頼してるんですけれども、その方も元々音楽がすごい好きでアーティストの絵をずっと書かれてた方なんです。それだけじゃなく、アーティスト本人とのコラボも何種類かあります。
各地で音楽を通じて仲良くなった方とコラボ商品を作らしてもらったりとか、すごく楽しく商品開発できてます。
ーー 大坪さんのDJ名が「DJ FERMENT(発酵する)」また面白いですよね!
大坪さん 自分も味噌とかを作りながらDJもやってたんで、なにか結びつく名前がいいなと思ってファーメントにしました。自分でイベントを主催したりとか、毎週末いろんなところでやらせてもらってますね。平日はちゃんと仕事して、週末は遊んでます。
作る前にまずはBGMをかけてほしい
ーー アップビートソースは6種類、すべて違う味わいで味噌の風味や醤油の味を感じますが、全部大坪さんがレシピ開発をされているんですか?
大坪さん そうですね。知り合いの飲食店の方とかにも相談してアドバイスをいただきながら、自分で一から作ったものもあります。
ーー アップビートソースのおすすめポイントをお伺いできますか。
大坪さん まず作る前に必ず音楽をかけて欲しいっていうこと、ソースそれぞれに合う音楽も提案させていただいています。買っていただいた方にQRコード付きのカードがついてくるようになってまして、友達のDJのDJミックスが聞けるようになっているのが特徴ですね。
ーー レシピのブックレット見ていただくと、普通はレシピの一番最初は、材料を切るとかですよね。それが、「1.BGMをかける」っていう(笑)
大坪さん はい。まずは音楽を、ですね(笑)僕自身はいろいろ聞くんですけど、70年から80年ぐらいの、ソウルミュージックとか、ディスコミュージックとか、黒人音楽がすごい好きで。そこから発生したヒップホップとかジャズとか、幅広くいろんな音楽が好きです。
日常に取り入れやすい多国籍な味
ーー アップビートソースのおすすめのレシピを教えてください。
大坪さん ソース全般、簡単な使い方ができるものが多いです。例えばレトルトカレーにちょっとソースを混ぜると、それだけで本格的な味に変わったり。ソースに漬け混んだり。漬け込まなくても肉をちょっと焼いて最後にかけて炒めたりとか、簡単な使い方もできます。そのまま野菜や肉にディップしてもらうのが一番簡単でソースの味もわかって使いやすいですね。
本当に簡単な使い方で十分楽しめるかなと思います。
ーー 確かに、多国籍料理といえば少し大変そうなイメージがありますが、アップビートソースなら簡単ですね。
大坪さん やっぱり料理をする時間がない方が増えてきていると思うので、のせるだけとかかけるだけとか、簡単に美味しく食べれることを意識して作ってますね。
ーー 現地で接客をしたときに面白かったのが、実はアップビートソースを手に取って興味を持たれた方って年配の方が多かったです。もちろん若い方もいらっしゃったんですが、実際買われていったのは、ご年配の方が多かったですね。
大坪さん それは作り手としても嬉しいですね。若い人を狙って作った商品が、年配の方にも興味持ってもらえるのはすごい嬉しいことだと思います。
ーー アップビートソース、それぞれにおすすめのBGMをぜひ教えて下さい!
大坪さん ジャミンソースはレゲエミュージックがいいですね。ボブ・マーリーが本当に合うと思います。ピギンソースはロックミュージック。ルートソースはアップテンポなファンクミュージックとかベースの効いた音楽がいいかなと。ホットチリソースは80年代のヒップホップで、レッドソースはニューヨーククイーンズのヒップホップが合います、間違いなく。サルサソースはもう名前の通りサルサミュージック。
受け継いだ味を変えない新しいものづくり
ーー 商品開発で意識していることはなんですか?
大坪さん うちの味噌はずっと味を変えずに受け継いで作ってるので、味噌の味をなるべく壊さないように、ということに気をつけてますね。アップビートソースもラベルは派手なんですけど、日本人の方に受け入れられやすい味に仕上げるようにも努力してます。
ーー 大坪さんの味噌づくりのこだわりを教えて下さい。
大坪さん こだわりって言うほどではないんですけど、醸造業で麹を扱うので、納豆とか他の菌をなるべく食べないっていうのはずっと心がけてますね。
納豆菌は菌の中でも強いんですよ。昔食べてた時期に失敗してしまったんですけど、食べたまま麹を触ると、大豆に麹菌がつく前に納豆菌がついてしまって、糸を引き始めたりとか、納豆菌がすぐ繁殖してはびこってしまうんです。その失敗を経験してから、納豆は大好きだったんですけど食べるのをやめましたね。
ーー 人生の座右の銘をお伺いできますか?
大坪さん 自分の中では『温故知新』という言葉が座右の銘です。アップビートソースみたいな新しい商品を作るんですけど、やっぱり昔からの味噌醤油とか、発酵の味をちゃんと大事にして新しい商品に落とし込んでいくっていうのは、これからも意識していくと思いますね。
ーー アップビートソース単体で見るとちょっと風変わりみたいなあるんですけどなんかそれを作る背景に今の大坪さんの温故知新という言葉があるのはものすごく納得というか響きました。
味噌や音楽のある食卓の提案
ーー これから今後どういう商品を作りたいですか?
大坪さん ソースとか醤油や味噌を使うための器を手掛けられたらいいなと思ってます。この味噌はこういう器、この醤油はこのしょうゆ差しとか、あと味噌汁の器だったりとか。食べることの周りまで提案できるようになれれば一番いいと思っています。
そこに音楽もちゃんとあって、器や食卓をどんどん提案できるようになってきたいですね。
ーー 今回のイベント「ニッポン味噌道中」に訪れる方々へメッセージをお願いいたします。
大坪さん ラベルは派手なんですけど、味はしっかり優しい味になっています。まず手に取って食べてみてもらって、音楽を一緒に楽しみながら使ってみていただけたらなと思います。
ーー 大坪さん、貴重なお話ありがとうございました!