【MISO PEOPLE'S VOICE】vol.003 大源味噌 八代目女将 室井郁子さん

【MISO PEOPLE'S VOICE】vol.003 大源味噌 八代目女将 室井郁子さん

味噌や作り手の方々のストーリーをつないでいく
【MISO PEOPLE'S VOICE】

味噌人:大阪府 大源味噌 八代目女将 室井 郁子 さん
聞き手:ドットミソ代表 テキサス・アユミ

ーー 本日のゲストは大阪府 大源味噌 八代目女将の室井郁子さんにお話を伺います。室井さん、どうぞよろしくお願いいたします。

室井さん  大源味噌 八代目女将の井郁子です。どうぞよろしくお願いいたします。

大源味噌は昨年ちょうど200周年を迎え、今年201年目を爆走中です。母方のおばあちゃんから代々続いた味噌屋で、私が今八代目の女将になります。五代目のときに太平洋戦争の大阪大空襲で蔵が全て喪失いたしまして。全て失ってしまったところから六代目が戦後に再建して、今に続いています。

今は蔵を一旦手放しまして、全国のあちこちの蔵元さんとご契約をさせていただいてオリジナルを作ったりとか、セレクトショップ的な立ち位置の大阪の味噌専門店でございます。

ーー 大源味噌さんは大阪の本当にど真ん中にお店を構えていらっしゃいますよね。実際お店に伺ったとき、一番目をひいたのが味噌とは思えないかわいらしいディスプレイでした!

室井さん そうですね、ジェラートケースに味噌が並ぶディスプレイをしています。インバウンドの外国人の方がたくさん来られるエリアなので、アイスクリーム!ジェラート!って言って、お店によく入ってこられたりします。

ーー 味噌にはいろんな種類があることが視覚的にわかって、味噌好きにはたまらない、すごくワクワクするお店構えでした。

異業種から老舗味噌屋の女将へ

ーー 室井さんは、お店を継がれるまで味噌とは全く違う仕事をされていらっしゃったんですね。

室井さん 元々、母方の実家だったので小学校の頃からお手伝いをしてたんですけれども、やはり味噌屋ってどっちかといえば地味な仕事ですよね(笑)

若い頃は親に少し反発心もあったので、親が決めたレールの上を歩きたくないみたいな、わがままな思いがあったんですね。もう少し華やかな仕事をしたいと長年全く違う業界にいました。料理家の仕事を経て、2年前に実家に戻ってきました。

ーー 味噌の仕事を継ごうと決意するまで、どのような心境の変化があったんでしょうか。

室井さん 長年旅行業界にいて、日本47都道府県や海外を飛び回っていました。ちょうどコロナ前もドバイの方に住んでいました。

仕事もとても忙しくて食生活も乱れていたところ、案の定、40代前半で病気になりまして大手術を受けました。そのときに、これからは自分で食べるものを選んで、自分で健康を手に入れてかなくちゃいけないんだって改めて感じました。

そこから食の勉強をしだして、体に優しく良いもの、病気を予防するものとして発酵食、その先にやっぱり味噌だというところに行き着きまして。ぐるっと回って味噌に戻ってきたっていう感覚がありました。

大病の実体験から味噌と食の大切さ実感

ーー ご自身の不調という実体験から、味噌や食の大切さを実感をされたんですね。

室井さん 食べるものというのは自分で選んでいけるものなので。食生活って、未来の自分への貯金だって私は思ってるんですよね。なので、ここから自分でどれだけ貯金ができるか、自分で病気を予防する体を作っていけるかっていうところは自分次第だと思います。

ーー ありがとうございます。”未来の自分への貯金”、とてもいい言葉ですね。
今は味噌屋の代表として経営をされながら、ご自身でもワークショップや発信など味噌を広める活動もされてらっしゃいます。

室井さん お味噌ってお味噌汁ぐらいにしかしないとか、ちょっと使っても金山寺みそをきゅうりにつけて食べるぐらいとか、料理のバリエーションを皆さんあまりお持ちじゃないんです。

味噌をもっともっと料理に使って生かしていくことで美味しいお料理ができる、もっと皆さんの食卓にお味噌が並べばいいなということを常々考えております。

28割麹の麹の優しい甘さ”白富士”

ーー 今回ご出品いただいている白味噌「白富士」について教えてください。

室井さん 関西では本当にあちこちにあるのが白味噌なんです。白味噌を食べたことがない方が一口味見されると、普通の味噌と全然違いますねってめちゃくちゃよく驚かれます。

白富士は塩分が4.9%。大体普通の味噌の塩分は10%から12、3%なので、普通の味噌と比べると塩分が半分以下です。麹の割合は28割、乾燥大豆の2.8倍の麹を使ってるんですね。関西の白味噌は麹の割合が20割以上というふうに言われてるんですけれども、28割はかなり入ってる方だと思います。

白味噌の中には水あめや砂糖、グラニュー糖とかを使っていらっしゃるメーカーさんもあるんですけれども、この白富士は一切使っていません。麹がたっぷり入ってる分、麹の優しい甘さが特徴になります。

ーー 県外の方からは、関西の白味噌の使い方がわからないという声も聞かれるんですが、おすすめのレシピを教えてください!

室井さん とにかく甘みがたっぷりあるので、おかず味噌を作ったり和え物したりするときにいれると、砂糖や甘みの他のものを使う量が少なくすみます。

私がこの夏一番よく作ったのは、この白富士を使った”白和え”です。本当に簡単で、木綿豆腐を少し水切りをして潰し、白富士とお好みで練りゴマを混ぜるだけ。もうそれだけで十分ですし、茹でたほうれん草とかインゲンとか人参とかそういうのを入れていただくと完成。とっても簡単でよく作りました。

ーー ありがとうございます、とても美味しそうです!今日の夕飯の一品が決まりました(笑)


(写真は味噌ディップ)

冷蔵庫の一段が全部味噌の子ども時代

ーー 関西はまさに白味噌文化ですが、室井さんご自身は白味噌以外も食べられるのでしょうか。

室井さん めちゃくちゃ食べますよ。普通の合わせ味噌や田舎味噌、あとは八丁味噌、豆味噌と米味噌のブレンドの赤だし味噌、もう本当にいろいろ食べます。

ーー 味噌には本当にたくさん種類がありますよね。

室井さん 子供の頃から味噌屋の娘だったので、うちの冷蔵庫の一段、全部味噌だったんですよ。それこそ白味噌から田楽味噌から柚子味噌から、いろんな味噌が入っていて。今日はどの味噌でお味噌汁をする?っていつも聞いてたので、母の味っていうのは決まったものが特になかったんですね。

小学校のときにお友達の家に行ったらお味噌が1種類しかないということにめちゃくちゃびっくりしたんです!私の家は味噌屋だけあってお味噌が本当に常に何種類もたくさんあって、いろんな味噌汁いろんな味噌料理を食べてたなと思いますね。

ーー 今回のイベント「ニッポン味噌道中」では、味噌は本当に種類が多くて、それぞれ違う魅力があることを伝えるのがテーマなのですが、室井さんのご実家の冷蔵庫はまさに理想の形ですね。

味噌汁を朝昼晩のむのがルーティン

ーー 室井さんの仕事へのこだわりはありますか?

室井さん 朝昼晩と必ず1日3杯、味噌汁を飲んでいます。いろんなお味の味噌汁を楽しもうかなとか、これも味見してみようかな、これとこれ混ぜたらどうなるだろうと考えたり。味噌汁を毎日朝昼晩飲むっていうのがすっかり習慣になってしまいました。

味噌汁の塩分のことを気にされてる方ともお話する機会があるのですが、お味噌汁は実は意外と塩分が少ないんです。お味噌汁って塩分だけじゃなく非常に大切な栄養素がたくさんあるので、塩分のことばかり心配するよりも、取らずに栄養が偏ってしまう方が心配っていうぐらいね。

お味噌自体にもたくさん栄養素がありますし、具材を工夫すればいくらでもミネラルやいろんな栄養がとれる一杯になるんじゃないかなってすごく思います。

ーー 本当に、多くの方に味噌汁の魅力を伝えていくか、色んな面で考えていらっしゃるんですね。

室井さん そんな風に、いつもお味噌のことで頭がいっぱいで1日3杯のお味噌汁を飲む!これが味噌屋の女将としての仕事のこだわりだったりします。

味噌汁文化を伝えていくことが使命

ーー 他の業界から情熱を持って味噌業界に入ってきた室井さんの、熱量と愛情を強く感じさせていただいています。今後の目標を教えてください。

室井さん 味噌業界って残念ながら右肩下がりで、50年前と比べると1人当たりの味噌消費量がぐっと減っているんです。

でも、味噌って1300年前からずっと日本人が食べ続けてきたんですよね。さまざまな時代の移り変わりがあって、それでも日本人は味噌っていうものが必要で、食べ続けてきたのが私達の食文化じゃないですか。

これからさらに時代が変わっていっても、将来を担う日本の子供たちに、もっとお味噌を食べてもらいたいなってすごく思ってるんですね。お味噌って本当に栄養の塊で、一杯の味噌汁って体にとってご馳走の一杯なんです。この味噌汁の文化を後世に伝えていく、もっと多くの人に伝えていくっていうのが私たち味噌屋の使命だと思ってます。

ーー 子どもたちへ伝えていく食文化。本当にそうですね。

全国各地の調味料No.1を決める選手権があるんですが、うちでは”カレーみそ”っていうおかず味噌でエントリーして最終審査に残っているんです。

この”カレーみそ”を作った経緯も、子供たちにどうやったらお味噌をもっと知ってもらえるだろうか、もっと美味しくお味噌を食べ続けてもらえるだろうかという思いからですね。

(味噌好きの方はぜひ一度は訪れていただきたい大源味噌の店舗)

やっぱり味噌って良い!と伝えていきたい

ーー 伝統産業では作り手の職人さんにスポットが当たることは珍しくないですが、室井さんのように味噌を広めていく側のお話は大変貴重でした。

味噌が発酵食品でとても良いということを知っていても、忙しくてなかなか料理ができなかったり、最近お味噌食べてないなっていう方ってやっぱりいらっしゃると思うんですね。

でもやっぱり味噌っていいよねって、一杯の味噌汁飲むと何かほっとするよねっていうような思いも含めて、皆さんに改めて味噌いいなっていうことを発信していけたらと思います。

ーー 熱い思いを本当にありがとうございます。最後に、北海道や全国の方々に一言メッセージをいただけますでしょうか。

室井さん ご自身の地域の馴染みの味噌が皆さんそれぞれあると思うんですけれども、ときには違うお味噌を食べてみると、また新しい発見ができると思うんです。

甘いお味噌を食べられる習慣がない方にも、ほんの小さじ1杯お味噌汁に混ぜていただくだけで、すごくまろやかになったり、いろんな使い方ができます。

インスタグラムやを色んなSNSを通して、レシピやで美味しい食べ方の情報発信をもっともっとしていきたいと思います。北海道にもぜひお仕事で行かせていただくことがあれば嬉しいなと思っています。

ーー 室井さん、私も胸が熱くなる味噌への貴重なお話、ありがとうございました!

 

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